前回ご紹介した『ほんのまくら』という
企画は、本を選ぶための情報の少なさから
読んでみるまで内容が殆ど分からない、
まさに「賭け」のような企画でした。
今回ご紹介する本は、そんな「賭け」の
ような企画で私が手に取った3冊の中でも、
1番の当たりと思える作品です。
読書の秋特別企画、2冊目。
川上弘美さん『神様』をご紹介します。
3つ隣の部屋にくまが引っ越して来た。
名前がないので「くま」とそのまま呼んでいる。
くまは紳士的で義理堅く、引越し蕎麦も
振る舞うし、料理の腕も一流だ。
ただし彼は自分がくまだと認識して
いるので、必要以上に気を遣う。
私はそんなくまと一緒に、
春のうららかな日に散歩に出掛ける。
他にも壺の精、梨の精(?)人魚など、
不思議な生き物と出会う短編集。
「くま」に惚れ惚れします。紳士過ぎる!
この本には9本の短編が収録されていますが
くまの話で始まってくまの話で終わります。
読み終わる頃にはきっと皆さんも、
くまが大好きになっているはずです。
この作品では、私たちが普段は
「出会うことのない生き物」との
日常生活が描かれていますが、
不思議とどれも恐くありません。
寧ろ、ふんわりと心地好い。
そして泣けます。
文学賞も受賞しているので、
読みやすさもお墨付きです。
そもそも個人的に私は熊が好きです。
この本を選んだ理由もまさに
書き出しの1文にあります。
くまにさそわれて散歩に出る。
少なくともこの書き出しで、作中に
熊が出てくることは分かりますからね!
そして読んでみれば見事に、
大当たりだったわけです。
台詞運びが巧みで、すんなりと文章が
入ってくるし、言葉の選び方も綺麗です。
この本もタイトルだけを見ていたら
出合えない1冊でした。