11月3日土曜日、午前11時。
様々なジャンルの本を紹介していく
『ブックベルト』のお時間です。
文化の日となる本日。
せっかくなのでほんの少しの時間、
「本」に触れてみませんか?
つい先日までは、半袖で丁度良いような
気温だったのに、いやはや今や暖房器具
の心配までする始末。季節、飛ばしすぎ!
光陰矢の如くご無沙汰しておりました、
こんにちは、たくです。
お久しぶりに『ブックベルト』に
お邪魔させていただきます。
ご紹介するのは直木賞受賞作、
朱川湊人『花まんま』です。
昭和、大阪の下町。
なにもかもが今よりずっと「不便」で、
荒削りという言葉が似合っていた時代。
そんな昭和の時代を「子供」として
過ごしてきた人々の持つ「ぼんやりと
しながらも忘れられない」思い出たち。
「あの頃、子供だった」大人たちが
語る、6つの物語。
直木賞受賞作ということで、
「読書の秋だ」と勢い込んで
手にしてみたのですが…いやはや、
これが小難しくなく面白かったんです!
皆さんも「忘れられない」少年期の思い出を、
きっといくつもお持ちだと思います。
この本はまさにそんな「忘れられない」と
いう感覚を詰め込んだような作品です。
まったく知らない時代なのに、
なぜか懐かしい匂いが漂っていて、
「あれ、この雰囲気、知ってる…」
なんてザワザワした気持ちになります。
淡々と語られる思い出話に、うっかり
涙が滲んでしまうのはもしかして、
「誰もが1度は子供だった」から、
なんて理由かもしれません。
時代に関係なく「子供」は存在して、
子供たちはいつか大人になるんですね。
文庫版解説にあるエピソードなのですが、
作者の小さな息子さんがこの本を読んで、
泣いてしまったそうです。
いままさに「少年」を過ごす子どもが、
「懐かしさ」を分かってしまう。
この作品の持っている力を、
端的に表していると思います。
花まんま 文春文庫 朱川 湊人 文藝春秋 2008-04-10 |