店主が団子を箱から取り出し、
店の奥の機械で団子を焼き始めた。
さすがに先刻の30本が効いたのか、
焼いておいた団子が無くなったのだろう。
一生懸命団子を焼いている店主を横に見ながら、
俺はようやく落ち着く事ができた。
暖簾の奥に見える店内は土間の様になっており、
中心にぽつんと団子を焼く機械がある。
商品ウィンドウには「みたらし団子」の他にも、
何やらきな粉の付いたお菓子があり、
もう一品売っているようだった。
モチっとしたお菓子だろう、何となく分かる。
ただ注文するのにはまだ勇気がいりそうだ。
視線を戻すと店主はまだ団子を焼いていた。
・・・ああ、集中している。
「この団子に賭けている」
もはやそんな気概まで伝わってくる。
うわ、非常に楽しみになってきた!
ワクワクしていると店主が団子にタレをかけ始めた。
ふむ・・・ふむ?
俺はそこになぜか違和感を覚える。
なんか、タレが、異様に濃く見えるのだ。
濃い、というか濁っているのだ。
今まで食べた事のある「みたらし団子」は、
きれいで澄んでいたのだが、ここのは違う。
何が入っているのか想像もつかない。
ただ年期だけは伝わってくる。
ごくり。
食いしん坊な俺は、限界だった。
「きな粉無しで先に1本に貰えますか?」
焼きたての団子にかかった濃厚なタレ。
これを熱々のうちに頂けるとは。
おお・・・醤油の風味と苦みに、
団子のモチッとした食感。
余計な甘みをはぶいたこの味は・・・。
あれ、微妙?
ガラパゴス化した「みたらし団子」。
なんか「もそっと」した味でございます。
やってしまった。
こいつが後9本も残っている。
一瞬で冷え切った脳内。
俺は内心パニックになってしまう。
ど、どうする。
という訳で次回。
太秦キネマ『気まぐれ団子屋4』、
『きな粉。貴様を愛そう、心から』に続く!
第1回『数奇』
第2回『三寒四温』
第3回『仁和寺』
第4回『葵祭1』
第5回『葵祭2』
第6回『葵祭3』
第7回『葵祭4』
第8回『京都でカレーうどん1』
第9回『京都でカレーうどん2』
第10回『京都でカレーうどん3』
第11回『祇園祭1』
第12回『祇園祭2』
第13回『おいでやす太秦』
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